動画:振ったポールがあるときは2、3旗門前からラインを変えていく。ソチ五輪男子回転2本目を完走した人の共通点とは。

photo credit: Atos at the Olympic Winter Games in Sochi looking at Bolshoy Arena with Olympic rings via photopin (license)

ソチ五輪から2年。ピョンチャンオリンピックまであと2年を切ったわけですが、賛否両論があった男子回転の2本目。世界中で議論になったこのセットは今考えればコースセッターであるイビツァ・コステリッチの父の強烈なメッセージだったのではないかと思うことがあります。

 これはあくまでも個人的な意見になりますが、2012年でカービングの時代は1つの終止符を打ったと見ています。2013年からはカービングは残りつつも、

「まっすぐの滑りはもう通用しない」

そんなセットが増えたようにも感じています。

 コステリッチの父はある意味で、アルペンスキー業界に大きな警鐘を鳴らしたのではないかと最近強く思います。また、ソチの男子スラローム2本目のセットを分析していくと今のアルペンを占っていたこともわかってきました。この2本目を攻略した選手達は、今のワールドカップをリードしているのです。

第1シードの2極化がこの頃から始まっていた。

アルペンスキー競技において第1シードは1番から15番でスタートをする選手のことを指します。ここに入ることが名誉であり、佐々木明さんの著書鬼攻め―魂削ってにも書いてありますが、第1シードに入ると収入も桁違いに増えます。それだけ名誉なポジションなのですが、2013年以降、第1シードの2極化がすでに始まっていました。

 キッカケはGSの新レギュレーションであるR35ルールではないかと思うのですが、この頃からテッド・リゲティがまず突出し、後を追うようにヒルシャーが続きました。また、2000年〜2012年までがカービングルールの時代に活躍した選手(日本勢もこの時代活躍しました)は、このR35ルール以降、GSはもちろん、SLでも世界から徐々に遠ざかるといったことがおき、逆に基本技術や身体能力の高いスキー選手が結果を出したと個人的には見ています。(SLは従来通りですが、まっすぐ攻めるタイプの選手が上位に行くにくいといったことが起きています。休業中のボディ・ミラーはすっかり高速系のみになっていますね。)

ソチ五輪の男子回転2本目はまさにその象徴ではないかと思うのです。

 それまではまっすぐに攻めてきた選手でも通用しましたが、ソチの男子回転2本目やその後のワールドカップを見ても、

1.ターンバリエーションのある選手
2.インスペクションで分析できてしまう選手
3.情報が多い選手

が有利になっているようにも思います。特に強く感じているのは1番のターンのバリエーションです。

ソチ五輪男子回転の2本目を完走できた選手に共通する技術とは

ある意味、これもアルペンスキーの基本を話すことになるのですが、アルペン競技において振ったポールがあった場合、通常は2、3旗門前から準備を始めます。つまり、

・少し早めに巻いて攻める
・または少しズラす

といったことをし、最短のラインで攻めるということをする場合があります。(人によって違うので、私の意見が不正解になることもありますのでご注意を)

 ソチ五輪の男子回転2本目を1人1人分析していくと、最大のポイントとなるのは

「振ったポールではなく、その前の赤いポール、ヘアピンの入り方」

にあることがわかってきます。

 つまり、多くの選手を苦しめたあの振った1本のポールが原因ではなく、そのポールに入るための準備を怠ったのではないかと思うわけです。

*実際のソチ五輪男子回転2本目の映像

ソチ五輪男子回転2本目を完走した選手はどんなテクニックを使ったのか?

この2本目の特徴は前半は途中棄権が多く、後半の15人は完走率が高くなっています。技術はもちろんなのですが、むしろ「後半の選手の方が情報を持っていたので有利だった」と言った方がこのレースの場合正しいかと思います。キッカケは

「イビツァ・コステリッチの滑り」

からではないかと思います。

 このソチ五輪男子回転2本目のセットはコステリッチのお父さんが立てたセットです。父の立てたセットを誰よりも熟知している彼が、無難に滑ったのには理由があります。実際に当時の映像を持っている人は30人全員の滑りを分析して欲しいのですが、

「完走者と途中棄権者のヘアピンの入り方が違う」

ということがわかります。

 簡単に言うと、途中棄権の選手はまっすぐに入り、完走した選手はヘアピンの入り口(赤いポール)でスキーの方向を修正したり、一瞬ズラしに近い感じでスキーの方向付けを行なう選手が見受けられます。コステリッチはこのヘアピンの入り方がうまく、その後のターンが無難でした。

 一方、完走できなかった選手は皆ヘアピンの入り方がダイレクトでまっすぐ、結果的に振ったところに対応できなかったのではないかという印象を受けます。またザックリとした印象ですが、このセットの場合スタンスの広い選手が有利に働いたようにも感じます。コステリッチもそうですし、優勝したマリオマットもワイドスタンスで有名です。

  本来であれば、インスペクションでこのようなことを見抜かないといけないのですが、多くの選手はカービング世代というか、まっすぐに攻めるしかバリエーションがなかった(というわけではないと思うのですが)、またはリスクを冒してでもギリギリを狙ったのかもしれません。こればかりは滑った人しかわかりませんが、少なくともヘアピンの入り方は映像からでもハッキリとわかるので、参考になるのではないかと思います。

情報が少ない場合は、尚更インスペクションが重要

ソチ五輪ほど難しいセットは私たちのレースではないですが、たまにこういった途中棄権が多いレースはあります。私も完走者が30人しかいないようなレースを2回、増毛町と遠軽で経験しましたが、ナショナルチームレベルの選手でも完走できなかったのがこの2レースでした。一方、完走し優勝した選手はライン取りからして違っていた記憶があります。、特に遠軽のスラロームは今でも覚えていますが、

「20秒差付いても完走すれば10位以内」

というひどい?レースで、スラロームが苦手な私でも7位になったわけですが(苦笑)、上位の選手の滑りを映像で見ても明らかに警戒して滑っていたのを記憶しています。増毛町もナショナルチームの女子選手がインスペクションで転倒して、急斜面を一気に滑り降りるくらいガリガリのアイスバーンでしたが(遠軽も同様)、こういった状況の場合、普段とは違った戦略が当然必要になります。

 誰かが言っていましたが、「ワールドカップより固いのではないか」というくらい固いアイスバーンを経験しましたが、こういったレースでも上手い選手はエッジで切っていき、多少叩かれてラインが落ちても、リカバリーが非常に上手いのです。

 ポールセットも、バーンコンディションもそうですが、イレギュラーなレースというのは年1回くらいは必ず来ます。そういったときは逆に周りの選手が勝手に転倒してくれるので、順位アップが期待できるときでもあります。私の場合は、北海道B級でポイントが悪くても10位以内に入ったので、当時の条件で全日本B級への参戦権が与えられ、翌年から朝里川選手権に出場することができました。

イレギュラーな状況にも対応できるようにすること

 誰でもソチ五輪のような完走率の低いレースを経験すると思います。時には信じられないくらい固いバーンもあれば、有り得ない難しいセットが立つこともあるかと思います。そういった状況になっても対応できるかどうか。夏の陸上トレーニングからいろんな動きをし、雪上でも対応できるように準備をしておくことが大切です。

動画:コステリッチのちょっと変わったトレーニング

最後に以前も紹介しましたが、引退し、ソチを完走したイビツァ・コステリッチの陸上・雪上トレーニングの様子を添えておきます。(陸トレに関してはあまり真似しない方が良いと思います。)


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