もう世界中で話題となっているマルセル・ヒルシャーの契約問題。本来であれば彼はアトミックのビンディングで契約していますが、セルデンとレヴィは
「マーカーのビンディングを使用した」
ことでさらにマニアのスキーファンでは噂になっています。(こういう方が両社にとって良い宣伝のような気もする・・・)
詳しいことはアルペンレースネットさんのほうで詳細が出ています。
参照:ちょっとした騒動となったヒルシャーのプレート&バインディング
この記事の中でコメントを見ると、
今回のセルデンのコンディションには、アトミックのスキー+Mのバインディング&プレートとの組み合わせが、快適性、という点でわずかに優れてたということだ。速さは同じだが、扱いやすさが少し優っていたということだろう。全面アイスバーン、または今回よりもスムーズな雪質ならばアトミック純正のセットアップを選んだはずだ。
どちらが良いとか悪いとかではなく、あくまでもベストな選択を重視した結果であり、場合によっては次のレースからはアトミックのビンディングを使用してくる可能性もあるということです。
ですが、こうなってくると
「みーんなヒルシャーのビンディング見てしまう」
のではないかと思います。(笑)
この動きは極秘でおそらく他の選手もひっそりとやっている可能性もあるでしょう。前にもこのようなニュースがあったので、マテリアルはワールドカップの見所の1つではないかと思います。
ただ、アトミックがマーカーの使用を認めたのはいいですが、来期以降の契約にも影響が出てきそうですね。また、すでに元アトミックで現在ロシニョールのカルロ・ヤンカ(*1)は、あまり今回のニュースに対し良い印象がないようですから、大々的にこのように世界的ニュースになるのであれば、他のスキーメーカーでも選手自ら動き、このような動きが出てくるかもしれません。
*1:カルロヤンカもヒルシャーのように他社メーカーの使用をアトミック側にお願いしましたが、彼は拒否されているそうです。なので、ヒルシャーだけがいいの?とヤンカは思っているようです。
シーズン途中のマテリアルチェンジの話は過去にあった
今でこそ当たり前になった「プレート」。そのプレートを最初に使用したのは「鉄人」の異名を持つマーク・ジラルデリと言われていますが(間違っていたらコメントでツッコミお願いします^^;)、95−96シーズンの途中でディナスターからブリザードにマテリアルチェンジをし、直後に行われたアルペンスキーシエラ・ネバダ世界選手権では金メダルを獲得することに成功しています。
このような事例もあるので、表向きヒルシャーは今季アトミックでいき、シーズン途中または終了後に契約内容を変えていくなんてことも十分にあるのかもしれません。少なくともワールドカップを代表する選手の1人であり、アトミックの顔でもあるヒルシャーが動いたということは、ここ数年続いた
「3点セット契約」
という常識が崩れるかも?しれません。
スキー選手のマルチ契約は実現できないのか?
例えばヒルシャーの場合、ビンディングはアトミックとマーカーの両方で契約するということはできないものなのでしょうか?近年は合併などで、経営難のスキーメーカーは吸収合併されたりし、その影響からか3点セット(板、ブーツ、ビンディング)が主流になりました。それまでは板は板、ブーツはブーツメーカーを指定したりしていましたが、ヒルシャーみたいに
「ビンディングは2社使いたい」
そういう選手も多いはずです。
契約金などは分散されるかもしれませんが、バーンコンディションによって組み合わせを変えれるよう、業界全体で新たな契約方式ができないものかちょっと疑問になることがあります。
使用回数によって1レースごとに金額が変わったりするのであれば、計算も面倒になってきますが、ヒルシャーの動きはある意味選手のホンネでしょう。
確かに1つのメーカーで板からビンディング、ブーツまで設計するのは合理的で、メリットもあるとは思いますが、スキーメーカーの枠を超えて共同開発とかできれば、それはそれで面白くなるのではないかと思います。
自動車企業では同じ車を2つの異なるメーカーから販売するということも当たり前になっており(ルノーカングーとメルセデス・ベンツ シタンのように)、デザインを変えて同じ性能のビンディングがあれば、消費者の選択の幅がさらに広がり、マテリアル選びも楽しさが増すはず。個人的にも板のデザインをサロモンにして、中身がアトミックだったらなーと思うこともありました。(場合によっては2個買っていくお客さんも出て、お金に余裕のある人はヒルシャーみたいに使い分けるかも。つまり売り上げが上がるかもしれない)
そんなわけで長くなってしまいましたが、まずはヒルシャーのビンディングに注目しましょうw
P.S.ただこのようなことは他でもあるので、たまたま今回大きく注目されたというだけなので、選手自身の動きが活発化しなければ3点セット契約は残っていくでしょう。引退したライナー・ショーンフェルダー(AUT)も日本製のレグザムを履いてメダルをオリンピックで取りましたが、トリノ五輪後、次の契約先であるフィッシャー側から「3点セットでと言われた」と正直に答えていたのが印象的でした。マーカーはビンディング、レグザムはブーツにこだわって作る職人中の職人集団ですから、その微妙な違いをタイムレースによって分析するため、違いがよくわかるのでしょう。
photo credit: Mt.Washington Auto Road via photopin cc